みち草

2004年からはてなぶろぐを書いています。このぶろぐでは日常の身辺雑記中心に書きます。

フェースシールドを作る

テレビ・ニュースで、院内感染、医療用物資の不足が報道され、掛かりつけのクリニックがどうなっているか気になっていた。

そんな時にインターネットの画面に、手作りフェースシードルの型紙が流れついた。

英文で書かれたその型紙をダウンロードする。クリアホルダーに型紙をのせて切り抜くだけなので、これなら不器用な私でも作れそう。

 

 型紙

f:id:kawanomiti:20200525151041p:plain

 

ところが透明のクリアホルダーが手に入らない。

いろいろ探し、ホームセンターで、SWAN S27-38(B4用)ピュアパックという張りのある透明の袋を見つけて購入する。厚みが0.03ミリ、横幅270ミリ、縦380ミリ。100枚入り消費税込み1084円なので、コストが安い。この他に後側を固定するリボンテープを数種類、百均で購入。

 

この袋の右側を縦片方に咲き切り開く。左上を頭位に合わせ切り抜く。あごの下を丸くカットする。

クリアホルダーの厚みは望むべくもないが、その分柔らかくふわーっと顔を覆うので、下から水や食べ物を口に入れることができるという利点がある。折りたたんでバックに入れて置き、病院受診や接触感染の心配があるときの、使い捨てシールドとして使うこともできる。

左が顔側 輪になっている  右側は頭の後ろ 切り開く 

 

下は顎下で丸くカット  f:id:kawanomiti:20200531145044j:plain    リボンテープで押さえる

 

近所の知人が癌治療のため、大学病院に入院することになった。彼女は抗がん剤治療で免疫力が低下しているため、院内感染を非常に恐れている。その時は透明度の落ちるクリアホルダーしか手に入らなかったが、フェースシールドを作って差し上げた。

退院した翌日「いただいたフェースシールドがあったから院内で安心して過ごせました。コロナウィルスの検査結果は陰性で、おかげさまで無事退院できました」と電話をいただく。彼女が無事退院してくれ、ほんとうにうれしい。また6月に入院の予定というので、今度は透明のピュアパックに色違いのリボンテープをつけて、2枚差し上げることにする。

 

 

 

掛かりつけのクリニックに、薬が無くなりそうなので、と電話してから受診する。

数ヶ月ぶりの受診だったが、入り口の外側の自転車置き場のそばに椅子が並べられ、厚着した人たちが数人座っている。何だろうと思ったら、発熱あるいは体調に変化がある人は、外で待つようになっていた。待合室の前で手を消毒し、用意された使い捨て手袋をつける。

 ドアは開け放したまま、受付カウンターの前には透明のビニールシートが張られ、発熱などの症状のない人は待合室の座席に座る。隣の席は封鎖され、いつも満員だった待合室が閑散としている。

 

診察室で不整脈専門病院での心房細動治療結果を医師に話し、期外収縮の動悸が多いので、来月24時間心電図検査を受けることを報告する。診察が終わってから、おそるおそるフェースシードルを出し、「これ作って見たんですけど、お役に立つでしょうか」と聞いた。医師は手に取って「すごい。いいセンスしている。一つしか持って来なかったの?」「先生に見てもらってからにしようと思って」

 

私が最後の患者だったため、看護師やリハビリ担当の若い男性も来て、「へぇー」といいながらひっくり返して見て、ちょっとした騒ぎになる。あげくのはてにフェ-スシールドをかぶらされ、前と後ろから写真を撮られるはめに。こんなに気にいってもらえるとは思わなかったので、「今度30枚持ってきます」と言ってしまった。医師は市医師会理事の一人で、学校の子どもたちに作らせて、マスクではなくフェースシードルを使わせたい口ぶりだ。「ここにいろんな模様を描けばいい」「子どもたち喜んで作るでしょうね」

ただ、このフェースシールドは材質が薄い。ホルダー製シールドのような耐久性がないので、元気な子どもには向かないだろう。

 

翌朝血液検査の結果を聞くついでにフェースシールドを持っていくことにする。それから一心不乱にフェースシールド作る。簡単に見えても30枚ともなると大変、静電気が起きてシールドにホコリや髪の毛がくっついてなかなか取れない。午後4時半の予約までに何とか作り終え、ラストの患者になる。診察室で検査結果を聞いてから、医師に30枚のフェースシールドを渡す。院内で使ってくださるそうだ。

医師が「お礼にリハビリをプレゼントするから」と、リハビリ担当の若い男性を呼ぶ。このクリニックは循環器内科が専門だが、健康寿命を保つための簡単なリハビリ体操を取り入れている。

 

担当者が「屋内と屋外どちらがよいですか」と聞くので、屋外を選ぶ。細い道路を隔ててクリニックの前に緑地が広がっている。時間が空いた時など、医師が患者を散歩に誘い、簡単な運動をしたり、自然ゆたかな緑地をフルに活用している。若葉が美しい木々に囲まれ、池にはカモが2羽、羽を休めている。人けのない緑地で、リハビリ担当者と向かい合い、柔軟体操からはじめて軽い筋トレまで一通り体操をする。

 

その後、スマホを見ながら私に「どんな歌が好きですか」とたずねる。カラオケにも行かないし、今ふうの歌は知らないし困った。「唱歌くらいかな」とつぶやく。

「ショーカってなんですか」。「小学校の頃、音楽の時間に歌わされた歌。たとえば、は~るの~うららの隅田川~♬

やっと若者はわかったようで、2.3曲スマホから唱歌を流し、それに合わせて一緒に歌う。池の周囲を歩きながら、この緑地が保全されたいきさつを、その頃まだ生まれていなかったであろう彼に説明する。それにしても、すてきな若者と緑地で歌を歌い、会話をしながら散歩する。なんと至福のひとときであったことか。

 

そもそものきっかけは、インターネットに「フェースシールドの型紙」をアップし、拡散してくれた見ず知らずの人から始まった。その型紙がシンプルで、身近な材料と低コストで私にも作れるものだったから。どこの国の人か、私は英語が話せないのでお礼をいうこともできない。

これからコロナウィルスと共存していかなければならない地球のために、少しでも助け合えるよう国を超えて手を差し伸べる人たちが居ることに勇気づけられる。インターネットでそのような世界中の人々とつながっているという感覚はとても心強い。