みち草

2004年からはてなぶろぐを書いています。このぶろぐでは日常の身辺雑記中心に書きます。

残暑

 炎天下アスファルトの往来。七十代後半だろうか、すてきな着物姿の老婦人とすれ違った。
 白地に細かい絣の夏の着物が涼しげだ。薄茶色の細帯は下半分が縞模様。淡いベージュの日傘に白い足袋。振り返って後姿を目に焼き付ける。帯はやはり貝の口にきりっと結び、細身の身体に似合っていた。
 そこだけ涼やかな風が吹き抜けるよう。七十、八十代の女性の着物姿は、着物が自然に身体にまとわりついていて無理がない。
 私はやっと貝の口の結び方をマスターしたところなので、貝の口のお手本にあえてうれしい。もうこのような僥倖に巡り会うことはなくなるのだという一抹のさびしさとともに。風前の灯の着物文化、もっと日常に、あの老婦人のようにさりげなく着られたらよい。


 仕事で病院に行った。入院患者の要介護認定調査は患者に面接し、担当看護師からもヒアリングし、医療処置について確認しなくてはならない。当然ながら前もって連絡を入れてある。
 急性期病棟のナースステーションは空っぽだった。モニターテレビが患者の状態を刻々と表示し続けている。しばらく待った。看護師が一人小走りで来たが、忙しそうで声をかけるのがはばかれた。
 先日は看護師から話を聞いている最中に緊急アラームが鳴り、そうそうに引き揚げざるをえなかった。同僚にこのジレンマを相談したら、何がなんでも聞かなくてはならないことは聞いてくるという。それでなければ仕事は前に進まないのはわかる。けれども・・・
 日本の病院の看護師の数の割合は欧米に比べて少ないという記事を読んだことがある。多くの看護師が毎年誕生しているはずだが、人手不足と過酷な勤務、医療ミスを怖れて退職する看護師は少なくない。薬の取り違えや患者の取り違えなどの看護師の医療ミスの原因を調べたら、仕事中に電話やナースコールで中断された時起こりやすいという。医療ミスの原因と対策はすでに示されているのに、なぜか、改善されたようには見えない。
 医療ミスによる死亡事故が明らかになると院長や理事長が報道機関の前で「申訳ありません」と頭を下げるが、それでどう改善されたのかを知りたい。病院と在宅介護の連携も命題でありながら、まだまだだ。