みち草

2004年からはてなぶろぐを書いています。このぶろぐでは日常の身辺雑記中心に書きます。

片や皇族、片や文学者

高松宮日記』1−3巻 『「野上弥生子日記」を読む』稲垣信子著
前者はカナ混じり文なので斜め読みで飛ばす。何せ全八巻だ。
野上弥生子は戦時中外国に出かけたが、書斎で内外の書物や情報を静かに読んでいた。8月15日、世界を相手に軍部が大バクチを打ち、すっからかんの負けで終わった。とかなり冷静である。
自分の息子が徴兵されないよう手を打ち、いずれ東京空襲を予測し、軽井沢の山荘に食糧を蓄え、家族が疎開できるよう整える。
戦時中というのに野上弥生子の家には実家から米、牛肉、卵、味噌、砂糖、醤油、餅、ミカンなどが送られてきた。特高に何度か呼び出されることはあったにせよ、家族にケガも戦死者もなかった。彼女が柔軟な知性の持ち主であり、物資に恵まれていたこと、運もあったであろうが、新聞や大本営発表に踊らされず、先を読んで行動したことが我が身と家族を守ることになった。著者の稲垣信子という人は、野上弥生子を尊敬しつつ、違和感、批判もきちんと書いているのが気持ちよい。
高松宮日記』と『野上弥生子日記を読む』 高松宮野上弥生子とも特権階級であり、庶民の苦労とはかけ離れてはいたものの、戦争の時代を知る上で両方とも興味深い。