みち草

2004年からはてなぶろぐを書いています。このぶろぐでは日常の身辺雑記中心に書きます。

武相荘と蜘蛛の糸

kawanomiti2005-11-28

昨日、11月最後の日曜日、前々から行きたかった旧白洲邸「武相荘」に行った。
小田急鶴川駅から徒歩15分。白洲正子と次郎夫婦が暮らした武相荘周辺は紅葉の盛りだった。
北国の鮮やかな紅葉とは違い、東京郊外らしい、渋い晩秋の色調に染め上げられているのが、武相荘の雰囲気にふさわしく思えた。
秋の企画展最終日。すでに武相荘を訪れている知人たちから、展示も少ないし、一度行けばいいわ、と聞いていた。白洲正子と次郎のファンでない人にとってはそんなものかも知れない。
しかし、白洲正子白洲次郎について、本で、書かれた文字でだけ理解していた私にとって、人に見せるためではなく、本物の生活がしたいという二人の思想が詰まっている家と調度、着物は興味深かった。
敗戦から占領に至る混乱期に政界の要人や文人らが訪ねてきて、座ったという囲炉裏や応接セット。囲炉裏の近くにかがんで、彼らと同じ目線をたどって見る。


母屋を出て、長屋門に向かって歩く途中、おもしろいものを見つけた。
ほとんど葉が散り終えた柿の木の、一枚の柿の葉が一本の蜘蛛の糸にからめとられ、宙吊りになりくるりくるり回っていた。
戦時中、細川護貞氏(細川首相の父親)が武相荘を訪れた時、「それにしてもいいところだなあ。入り口にある柿の木の枝ぶりがまたいい。まるでゴッホのデッサンのようだ」と感嘆した柿の木である。
柿の葉の上には間を置いて細い小枝が横に、その上にもう一段小枝が、蜘蛛の糸によってモビールのように繋ぎ止められ、揺れているのである。
蜘蛛の糸を空に向かってたどると、上には大きな蜘蛛が巣を張っている。
黄色い縞模様の蜘蛛の姿を見た私は、ジョロウグモにちがいないと確信した。と同時にこれは、正子だ、と。
(インターネット画像で調べたら、やはり秋の女王と称されるジョロウグモだった)。

蜘蛛の糸に繋がれて回転する柿の葉は次郎か。

こういうと次郎ファンには怒られるかも知れない。たしかに次郎さんはカッコイイけど、私は正子の存在感の方に肩入れする。
武相荘も正子の趣味で貫かれている。妻となっても好きなように自分のやりたいことを貫いた正子は凄い。だけど、亭主面せず正子のやりたいようにさせて、そういう正子を尊敬していた次郎も偉い。
二人とも古いものを大事にしながら革新的、似合いの夫婦だったのね。
今、白洲次郎ブームということで、図書館で白洲次郎の本は予約待ち状態だ。
また、いつの日か武相荘を訪ねてみたい。