みち草

2004年からはてなぶろぐを書いています。このぶろぐでは日常の身辺雑記中心に書きます。

 秋の夜長に

いつも単細胞の精神構造を悲しく思うが、時にはそれゆえの幸福に浸ることができる。
どういうわけかメール一覧が見られない状態が続いていたので、金曜日の夜、ニフティサポートセンターに電話したら、それほど待たされずにつながった。出たのは女性で、てきぱきとした指示に従って操作して、すぐに解決した。
そういうマニュアルなのか、バカていねいな口調なものだから、こちらまでつられてございます口調になるのがおかしい。でも、適切で誠実な対応ぶりに、しばらくほんわか気分を味わった。

昼間、仕事で訪ねた父よりも1歳年上のオバーサンとの出会いも忘れられない。
通りに面した古い建物の戸を開ける。冷え冷えとしたコンクリートの土間の向こうに畳の居間があり、掘りごたつに入った小さなオバーサンがいた。
子供たちは独立し、老夫婦二人だけの暮らし。オバーサンの手はリウマチ特有の変形が見られた。今は痛みも治まり、夫が買い物や掃除をやり、自分は調理を受け持っているという。年金は国民年金だけのつつましい暮らし。介護保険のサービスは住宅改修の手すり取り付けだけを使用。
「ここでパン屋をやっていたのよ。二人で50年間パンを焼いて、売ってたの」。
ガラーンとしたコンクリートの土間は、粉をこねて形づくり、パンを焼いていた場所だったのね。
「今でもお客さんと話している夢を見るのよ。楽しかった」と静かに笑みを浮かべながら話すオバーサンの顔を見ながら、なぜか涙ぐんでしまった。オバーサンは少しも悲しそうではなかったのに。