みち草

2004年からはてなぶろぐを書いています。このぶろぐでは日常の身辺雑記中心に書きます。

砂上のマイホーム

いつも穏やかでにこやかな東さん(仮名)、でも先週は少し感じが違っていた。
今思うと、東さんらしい冗談がなかった。私自身、東さんから聞いた話は胸に宙ぶらりんに残ったまま、だ。
東さんは、マンションの8階に住んでいる。入り口はオートロックで、築二十数年になるという。私の住む築四十年のボロ鉄筋長屋とは比べ物にならない、人並み以上の年金をもらう東さんにふさわしい外観だ。
そのマンションの大規模修繕のため、部屋を1週間管理会社にあけ渡さなくてはならなくなった。壁を壊し、床を剥がす工事が行われるらしい。その間、東さんは子供の家に厄介になることにした。
必要な修繕工事だが、かなりの費用負担が発生する。住人の中には払えない人もいるらしい。マンションの理事会でもまとまらず、結局工事をしない人も出た。東さんの真上の住人もそのうちの一人。
管理会社は水漏れ事故があった場合は、直接相手に損害額を請求してくださいといった。東さんは、もし被害があれば請求するつもりですが・・・という。数年後には定期的な外装工事も廻ってくる。景気や雇用の不安定さ、年金もどうなるかわからない中で、建物の老朽化は確実に進む。また、住んでから欠陥が見つかり、予期しない出費にみまわれることもある。
たまたま近くを通りかかり、このマンションが目について購入したという東さん、マンションを買う時、こういう事態を想定しただろうか。


私の弟の一人が埼玉県に住んでいるが、十年以上前、住んでいる賃貸公団住宅の建て替えを機に、中古の分譲マンションに引越した。毎月十万円のローンを払い続け、弟が死ねば残りのローンは帳消しになる仕組みらしい。賃貸派の私は弟が中古分譲マンションに移るという話を聞いた時、反対だった。でも弟の連れ合いが、何か目標があった方がいいかな、と思って。というのを聞き、弟とはいえ他人の家庭のことなので、それ以上いえなかった。弟はその後勤めていた建築会社でリストラにあい、職を転々とした。

それから間もなく阪神大震災が起きた。マンションが壊れ住めなくなったが、建て替えをめぐり住民の意見がまとまらず、住む所はないのに、マンションのローンだけが残った。という報道を目にするようになった。弟も阪神大震災の後だったら、たぶんマンションを購入しなかったかもしれない。

アメリカのサプライムローンというの、私にはよくわからないが、砂上の楼閣になりかねないからくりに気づかず、マイホームの夢に乗せられるという点では似ている。
日本の分譲マンションに見られるマイホーム取得の形態は、産業界の要請と住宅ローン減税などの国の政策により導き出されたものだと思う。また、一戸建てでも広い段差のある家にとり残された淋しい高齢者の多いこと。年齢、生活スタイルに合わせて住み替えられる住宅政策が必要だ。