みち草

2004年からはてなぶろぐを書いています。このぶろぐでは日常の身辺雑記中心に書きます。

冬の光

  死とは、死を賭して周りの者を導く、人生最期の授業

      藤原新也著「メメント・モリ」(死を想え) より



ソノ子さんが亡くなって2週間が過ぎた。書類に印鑑をもらうためにおヨメさんのアキ子さんを訪ねる。
ソノ子さんの寝室だった場所に、白い花に囲まれた遺影があった。デイの職員が撮ったもので、お孫さんが葬儀用の写真として選んだものだ。とてもおだやかなよい顔をしている。焼香させてもらい、アキ子さんの話を聴く。

葬儀は自宅で孫夫婦とひ孫、近親者だけで行った。祭壇はソノ子さんとアキ子さんがいつも過ごしていた吹き抜けになっているリビングに設けられた。
葬儀の最中に2階の窓から日の光が射し込み、ちょうど光の中に遺影が浮かびあがり、参会者を感動させた。
葬儀の終わった後に、アキ子さんのお姉さんが電話で、「あんなに感動したお葬式はなかったわ。あの光はアキ子さんへのご褒美だったのね」 といってくれた。「そういってもらってとてもうれしかった」とアキ子さんは目を潤ませる。

生前のソノ子さんは脳腫瘍による麻痺が消えて甦ったり、最期まで歩くことをあきらめず医師や周囲の者を驚かせた。
アキ子さんに送られて家の外に出た時、透水性舗装の粗い目の間にサクラだろうか、枯葉が一枚、直立しているのを見つけた。ちょうどソノ子さんの遺影のある部屋の横だ。あー、ソノ子さんだ。とすぐに思った。