みち草

2004年からはてなぶろぐを書いています。このぶろぐでは日常の身辺雑記中心に書きます。

昭和のくらし博物館

kawanomiti2009-12-15

東京大空襲訴訟判決についてのニュースを食器洗いの手を休めて見入る。
国会が立法を通じて解決すべき問題というのがどういうことかわからない。軍人や軍属には手厚い軍人恩給が支給されるのに、空襲被災者は何も救済されないというのは、当事者たちが訴訟を起こしたからわかったことだ。
3月10日の東京大空襲では、紙と木でできた下町の家屋が、米軍の焼夷弾じゅうたん爆撃による火炎で、たったの4時間で焼き尽くされ、10万人が焼死した。原爆投下もそうだが、史上こんなに残酷な戦場はなかったのではないか。昭和の暮らしが空襲によって壊滅した下町。


今日は昭和のくらし博物館10周年記念特別イベント 記録映画「昭和の家事」上映会があった。上映会場には年配の人ばかりではなく、若い人の姿も見られた。私は祖母がやっていた、洗い張りや布団作りを見たかったが、今回は「掻巻きをつくる」「おはぎ」の上映があった。
小豆を煮てこしあんを作る。私もこしあん作りに挑戦したことがあるが、あんを煮詰めるのは火山の溶岩が煮えたぎっているような、やけど覚悟の手間と時間がかかる大変な作業で、二度と作りたいとは思わない。田舎ではぼた餅といったけど、小麦饅頭や混ぜご飯など重箱に詰めて、隣近所に配り配られしていた。
大田区南久が原、東急多摩川線下丸子駅近くの住宅街に、昭和のくらし博物館がある。昭和26年建築の庶民住宅を、中の家財道具ごと保存し、丸ごと公開している博物館。この家の長女であり、生活史の研究者である小泉和子さんが個人で運営している。
建物を単なる建築の保存・活用と資料収集の場とせず、現在の私たちのくらしを見直す場に、多くの人が関わる文化財活用の新しい試みの場に、また昭和の空間や人のつながりを感じる都市の中の憩いの場にという思いと信念を持って1999年に設立したもの。
エアコンのいらない風を通す窓、縁台のある庭がいとおしい。今さら昭和30年代に戻りたいとは思わないけど、でも日本の気候風土にあった建物の作りや、隣人と適度な距離を保ちながら交流できる縁側や土間など生活の工夫を何で捨て去ってしまったのかと残念でならない。

写真は「昭和のくらし博物館