みち草

2004年からはてなぶろぐを書いています。このぶろぐでは日常の身辺雑記中心に書きます。

「記憶の銀行」

 テレビから流れる「記憶の銀行」という言葉が耳に残った。
 高齢者の証言を共有しようという運動をイタリアの若者たちがはじめたという内容で、銀行という言い方が新鮮に思えた。
 私自身今までに、介護の仕事を通して爺さま婆さまから聞いた話は、宝物であり、財産になっている。ああ、どれだけたくさんの爺さま婆さまが、心に残るつぶやきを残してあの世に旅立って逝ったことか。

 先日、大正5年生まれ94歳になる婆さまから聞いた言葉も味わい深かった。記憶力が低下し、短期記憶は忘れるのに、昔のことは覚えている。彼女は旅順で育ち、敗戦と同時に家族と引き揚げてきた。「小学校高学年の遠足で、203高地に遠足に行ったの。あちこちに骨がありましたよ」という。大陸育ちをほうふつさせるゆったりとした笑顔が可愛らしい婆さまである。
 さて旅順、203高地という地名は知っている。でも中国のどの辺にあって、満州や日本とどのくらい離れているのか。悲しいかな、私には位置関係がつかめない。
 同席する娘さんが、「お母さん書いておきなさいよ」というが、稀有な体験の持ち主である。次の訪問時に、「記憶の銀行」に記録してもらうことを勧めてみよう。