みち草

2004年からはてなぶろぐを書いています。このぶろぐでは日常の身辺雑記中心に書きます。

 きりりと背筋を伸ばす

 不幸な子ども時代を送り、辛さを軽くするために泣くことが多かった。そのせいでおそらく涙腺がゆるんでしまったのだろう。ニュース見ては涙、ドラマで泣き、みっともないので映画館ではライトがつく前に抜け出したい。

 昨夜はNHKETV特集「失われた言葉をさがして 辺見庸 ある死刑囚との対話」を見ながら泣いた。久しぶりに辺見庸を画面でみる。脳梗塞の後遺症で半身麻痺が残り、大腸癌にもなったと聞いたが、杖をつかずに犬と歩けるようになったんだ。
大道寺将司という名前は記憶にあったが、26歳で逮捕され、死刑が確定し、逮捕以来37年間も獄中にあり、被害者に詫びながら俳句を作っていることを知らなかった。

 「獄中にいるあなたと、獄外にいるわれわれと、どちらがすさんでいるか、わかったものじゃない」。外の世界から切り離された大道寺という存在を通し、3・11後に失われてしまっている「言葉」を探そうとする辺見庸。

 濃密な1時間半だった。大道寺の俳句は、難解な言葉が新鮮で、想像力が刺激される。
「棺一基(かんいっき)」 大道寺将司全句集 ぜひ読んでみたい。

 
 最近読んだ本では、大野更紗著『困ってる人』が面白かった。面白いだけでなく、感動し、希望がある。偶然ながら、辺見庸は石巻出身、大野更紗は実家が福島。当然「3.11大震災」は他人事ではなく、衝撃の大きさゆえに3.11に対して、軽々しい言葉は吐かない。3・11後の読み物としてふさわしい二冊だと思う。
 
 元ケアマネージャーとしては、社会福祉制度にたよるなと、主治医意見書に在宅で闘病するために必要なサービスのチェック、記入をしない主治医(けっこういるのだ)に呆れる。でも文中のQ区のケースワーカーなら、医師の横暴をきちんと見て、福祉の視点でカバーしてくれそう。
 
 大野更紗は26歳なのにビルマ女子、吉本隆明、宮本常一を読む知性派。退院した後の展開も楽しみ。友達知人にもメールでお薦めした。