みち草

2004年からはてなぶろぐを書いています。このぶろぐでは日常の身辺雑記中心に書きます。

「自民党が原発をやめられない理由」

 昨年夏の異常高温でぬかみそをだめにしてから休んでいた。白菜キムチがなくなったので、ぬかみそを作り直してひと月が過ぎた。今人参とセロリが歯ごたえがよく美味い。ふとキャベツの茎はどうかと漬けてみたら、歯ごたえはセロリよりもあっていける。毎日何かしら小さな発見があるのは幸せなことだ。
 ビデオ・ドットコムで河野太郎さんが出るという。待ってました。真打登場! タイトルは自民党原発をやめられない理由」 都知事選で脱原発の意味が混線して何がなんだかわからなくなってきたが、さすが頭の回転の速い太郎さん、こんがらかっている元を明快に整理してくれた。
 2012年の参議院選自民党は公約として原発は過渡期の電源として、減らしていく方向を打ち出していたのに、安倍政権は今、主要な電源と言い出し推進しようとしている。
 河野氏が代表を務める自民党脱原発派のエネルギー政策議員連盟は、政府のエネルギー基本計画の原案に対抗する形で、原発の新増設・更新は行わず、核燃料サイクルも廃止して「40年廃炉」を徹底することで緩やかに脱原発を実現するための提言を策定し、政府と自民党に提出している。
 しかし、河野さんは自民党内では実際に脱原発の声をあげられる議員の数は党所属国会議員409人中せいぜい50人前後ではないか。多くの若手議員から、「原子力村から脅された」などの相談を受けているが、本心では原発をやめるべきだと考えている議員の多くが、こうしたロビー活動のために身動きが取れなくなっている実態があると指摘する。
 原子力ムラは政治家にとって命綱となる選挙を、物心両面で支えている。パーティ券の購入や政治献金などを通じた政治活動の支援も、電力会社はもとより、関連会社、下請け、関連団体などを通じて、幅広く行っている。原発の再稼働を容認しないと発言した途端に、議員の集票や資金集めに支障が出てくるといっても過言ではないほどの影響力があるというのだ。特にやる気のある新人や若手議員は選挙での支持基盤が弱いため、電力会社から「次の選挙では支援しない」と言われれば、政治生命の危機に陥るような議員が大勢いるのが実情だという。
 そのような与党内の党内事情と同時に、もう一つ日本が原発をやめられない明確な理由があると河野さんは指摘する。使用済み核燃料の最終処分場を持たず、また核兵器を持たない日本は、原発から出るプルトニウムなどの核のゴミを処理する方法がない。そのため、日本の原発政策は一度発電に使った使用済み核燃料を再処理して再び燃料として再利用する「核燃料サイクル」と呼ばれる遠大な計画がその根底にある。ところが実際には核燃料サイクル事業は高速増殖炉もんじゅ」の相次ぐ事故やトラブルで何兆円もの国費を投入しながら、まったく動いていないばかりか、2050年までは実現できないとの見通しだ。
 問題は日本が核燃料サイクル事業を放棄した瞬間に、電力会社が資産として計上している膨大な量の使用済み核燃料がすべてゴミになってしまい、電力会社の経営状況が悪化してしまうことだ。東京電力などは債務超過に陥り、経営が破綻してしまう。また、中間貯蔵を条件に青森県六ヵ所村に保管してある使用済核燃料も、燃料の再処理をしないのであれば、各電力会社がそれぞれ自分の出したゴミを引き取らなければならなくなってしまう。元々、そういう条件で青森県に置かせて貰っているのだ。しかし、日本中の原発に併設された使用済み核燃料プールは、既に70%以上が満杯状態にあり、どこもそれを引き取るだけの余裕はない。また、原発の近くに使用済み核燃料を保管することのリスクがいかに大きいかは、今回福島第一原発事故の際に、稼働していなかった4号機がどうなったかを見れば明らかだ。
 河野氏が指摘するように、日本が原発をやめられない理由は実は非常に単純明快だが、問題は国会にこの問題を解決するガバナビリティ、つまり自らを統治する能力がないようなのだ。民主党政権もこの2つの問題に明確な解を出せなかったために、脱原発を目指しながら、最終的に策定した計画は「2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」のようなやや意味不明なものになってしまった。民主党よりも更に物心両面で原子力ムラへの依存度の高い自民党では、「やめたければ原発をやめられる国」になれる見込みが、ほとんど持てそうもないと言っていいだろう。
 河野氏が率いるエネルギー政策議員連盟は今回政府と自民党に提出した提言のなかで、最終処分場問題の解決には明解な答えを出せる状態にないことを前提に、(1)核燃料サイクルを廃止し使用済み核燃料はゴミとして扱う、(2)それが理由で経営が悪化する電力会社に対しては国が送電網を買い上げることで公的支援を注入する(そうすることで自動的に発送電分離が進む)、(3)各原発が六ヵ所村から引き取った使用済み核燃料は最終処分場問題が解決するまでの間、サイト内にドライキャスク(乾式)貯蔵法によって保管することで、地震津波などで使用済み燃料プールが損傷して大惨事が起きるような危険な状態を回避すること、などを政府に申し入れている。
 現在政府が公表している新しいエネルギー基本計画はあくまで原案であり、自民党内や国会での議論はこれからだ。河野さんは選挙公約に違反している部分については、党内議論の過程で徹底的に反対し、変えさせていきたいと抱負を述べるが、どうなるだろうか。2011年のフクシマ水蒸気爆発以後、原発推進に疑問を持つ議員も増えたが、原子力ムラとつるんでいる声の大きい議員に対抗できるか。

 最後に「そのようなしょぼい利権構造を変えられない我々日本人って何なんだろう」と、外国でも活躍してきたジャーナリスト神保さんの問いかけが痛い。小泉さんは都知事選の結果を受けて、まだまだこれからと脱原発への意欲を見せている。河野太郎さんとタックルを組めば自民党の壁を崩せるかもしれない。河野太郎さんの話を聞いていると、野党よりも自民党の方がまだ希望がありそうに思えてきた。